2016/5.25『樋口一葉_会見レポート』


  この夏、3年ぶりに再演される『頭痛肩こり樋口一葉』の製作発表が行われました。今回、初めて作品に参加する永作博美さん、そして3年前の『〜樋口一葉』からの続投となる三田和代さん、熊谷真実さん、愛華みれさん、深谷美歩さん、若村麻由美さんが、舞台の衣裳に身を包んで登場(若村さんは、舞台では見られない"生前"をイメージした衣裳)。笑いを交えながらも、作品への強い思いがうかがえる会見となりました。 主なコメントは次のとおりです。

井上麻矢(こまつ座)樋口一葉_会見レポート

『頭痛肩こり樋口一葉』は、1984年、こまつ座の旗揚げ公演での作品で、30年前の86年には、東宝さんとの共催で芸術座でも上演された深い縁(えにし)で繋がっている作品でもあります。それゆえに、今回、このような形でこの作品をみなさまにお届けすることができ、大変光栄です。
 2013年、こまつ座の100回記念公演としてもこの作品を上演しましたが、これ以上にない素敵な女優さんたちの中に、新たに一葉役として永作博美さんをお迎えすることになりました。永作さんにはまた新たな一葉を演じていただけることを楽しみにしています。三田和代さんは井上戯曲には欠かせない女優さん。熊谷真実さんは、昨年、こまつ座「マンザナ、わが町」で読売演劇大賞優秀女優賞、紀伊國屋演劇賞個人賞という二つの賞を受賞されています。愛華みれさんは抜群の歌唱力でこの一座を盛り上げていただける方。深谷美歩さんは、新国立劇場の演劇研修所で、演出の栗山民也さんが直接にお育てになった秘蔵っ子です。そして最後に若村麻由美さん。若村さんはこの花螢という役に惚れ込んで受けていただいたという経緯がございます。この素晴らしい6人の女優さんを栗山さんがどのように演出されるのか、そこも見どころだと思っています。栗山さんも「本当に楽しみだ」とおっしゃっていました。
 ご存知のように、樋口一葉は24歳で逝去しました。その若さの中で、一葉は女性のいいところからそうでないところまでを見つめ、生き抜いた作家です。女性のみならず、男性の方にもこのお芝居を観にきていただき、生きる勇気を受け取って劇場を後にしていただけるよう、一同、取り組んでまいりたいと思います。

永作博美(樋口夏子=一葉役)
 今回、新入りとしてやらせていただくことになりました(笑)。樋口一葉さんというと五千円札でお馴染みかと思うのですが、その人生についてはご存知でない方も多いのではないでしょうか。かく言う私も、五千円札を渡したくないという思いから、ついお財布に溜めてしまう有り様なんですけど(笑)。ただ、一葉は、家のことをはじめ、すべてを背負いながらも、とにかく必死に生きてきた女性なんです。そのあたりをお客様にしっかりと感じていただけるよう、井上ひさしさんが描かれた一葉を一生懸命、端から端まで出せていけたらと思っています。
 今日、初めて共演者のみなさんとお会いしたのですが、とにかくにぎやかでビックリしました(笑)。地方公演もあるのでこれからがとても楽しみです。どうぞよろしくお願い致します。

三田和代(夏子の母・樋口多喜役)
 今年、芸能生活50周年を迎えました。思い起こせば35年ほど前、まだ劇団四季にいた30代後半の時に、井上ひさし先生の『藪原検校』という作品を拝見して身体に衝撃が走り、「こういう作品に出られる役者にならないといけない」と感じたんです。その後、ようやく43歳の時に、『國語元年』という作品で初めて出させていただきました。それから井上先生の作品は10作品やらせていただき、いつも先生に手を引っ張っていただきながら、この舞台の道を歩いてきたと思っています。
 「亭主を武士に育て上げた」というような台詞もあるように、多喜さんは江戸時代の価値観をもっている女性です。その後、明治維新で世の中がガラリと変わって平民になるわけですが、時代に翻弄されながらも、必死に生きる姿をしっかりとお見せしたいと思っています。

熊谷真実(中野八重役)
 三田さんの言葉に聞き惚れてしまいましたが(笑)、私も初めて井上先生の作品に出られた時には「ようやく演劇人になれた」という思いがあり、その感動はいまだに続いています。
 八重さんは、樋口一葉さんがお書きになった「にごりえ」や「たけくらべ」などの主人公を凝縮したような役だと思うんです。登場する度に、波乱万丈の出来事が起こっていて……。初めて台本を読ませていただいた時は、こんなに不幸な女性を明るい私が演じられるんだろうかと。ただ、そんな八重さんを今回も愛情をもって演じられたら。全体重をかけて臨みます(笑)。

愛華みれ(稲葉鑛(こう)役)
 以前、大病をして女優をあきらめた時に復活させていただいたのが、井上先生の『きらめく星座』でした。またこうして井上先生の作品に出られるのは、「あぁ、私は女優なんだ」と思える瞬間です。
 鑛さんは、世が世なら旗本のお姫様なのですが、時代が大きく変わり、どんどん落ちぶれていきます。ただそんな時にも自分のプライドをもち、夫に対して内助の功を果たそうとする。この時代の女性の誰しもがそうであったように、涙をこらえながらも表向きは笑顔を見せているような強さや賢さを見せていけたらいいですね。

深谷美歩(夏子の妹・樋口邦子役)
 邦子という役を再び演じられることが決まってから、この作品を成功させるために生きているといっても大げさではないくらいです。私のすべてをかけようと思っています。
 樋口家の生活はすごく苦しいのですが、それでも邦子には、夏子という自慢のお姉さん、少しうるさいお母さんという、とても大切な家族がいます(笑)。邦子として、家族を精いっぱい、ひたむきに明るく支えていきたいです。

若村麻由美(幽霊・花螢役)
 私は幽霊です(笑)この作品では、夏子さんの中で思い描かれる死の象徴として登場するのですが、そんな二人が絡みつつも笑いを誘ってしまうのが、井上先生の戯曲の素晴らしいところだと思います。しかも、登場人物が一人、また一人と幽霊になっていき、最後には、死ぬのが怖くなくなるお話になっているという(笑)
 花螢は新橋耐子さんがずっと大事にされていたお役で、そのあまりの素晴らしさに「花螢は新橋さん以外にありえない」とずっと思っていました。ですから、お話をいただいた時は、「私にできるだろうか?」と。でも、三田さんをはじめ、みなさんに引っ張り上げてもらいながら、3年前はなんとか務めさせていただきました。だから今回、このチームに初めて参加される永作さんも大丈夫です。頼りない私もついています!(笑)
 舞台をご覧になる方にとって、花螢の顛末は「許す」という意味について考えることになるのかなと思いますし、最後の邦ちゃんの姿からは、それぞれの祖先や先輩との繋がりについて思いを馳せることになるのかもしれません。私は、とにかく幽霊らしく、舞台を浮遊したいと思っています。
 また会見後、三田和代さんの芸能生活50周年をお祝いして、共演者による花束贈呈、ケーキのプレゼントが行われました。温かいサプライズに思わず声を上げる三田さん。「気が付いたら50年が経っていました。井上先生に出会えたことは、私にとっての大きな宝です。また長い劇団生活から離れ、一人で歩くようになって最初に出演したのが、蜷川幸雄さん演出の『にごり江』という樋口一葉さんの作品を元にした舞台でした。こうやって、まだ舞台に立てることは本当に嬉しいです。みんなに負けないように身体を鍛えながら(笑)もうしばらく舞台にいたいなと思います。頑張ります!」。


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